民話のふるさと遠野と釜石製鉄の歩みを学ぶ
雪も溶け桜が咲き始めた4月下旬に遠野郷を訪ねた。遠野ふるさと村では四季折々の自然を楽しむことができる。また世界遺産に登録された橋野鉄鉱山・高炉跡を見学し、東日本大震災から5年が経過した大槌町や釜石を訪れた。
2016年4月29日(金)曇り時々雨
南部曲り家千葉家
遠野地方の古民家は「南部曲り家」と呼ばれるものがほとんどであった。曲り家とは人が住む母屋と馬小屋が繋がっているL字型の住居である。同じ屋根の下で暮らす馬はかけがいのない存在であったという。千葉家は江戸時代に建てられた代表的な南部曲り家で、下を見渡して目の届く田畑は全てこの屋敷の主千葉氏の所有だったと言われている。今月1日より保存修理工事に入り約10年間は休館中である。曲り家の解体工事前は敷地外から外観を眺める事が出来た。
続石
南部曲り家千葉家の近くにある続石を見に行った。鳥居をくぐり軽い傾斜の杉木立の林道を登ると弁慶の昼寝場がある。その奧に2つ並んだ石の上に巨石が乗っているように見える石がある。よく見ると左側の石のみに乗っているのである。自然とはいえ何とも不思議な石であった。
山口の水車
農産物の脱穀や製粉に地域共同の水車が使われていた。機械化により現在は使うことも無くなった水車小屋であるが遠野の風景のシンボルとして保存されている。建て替えたばかりのようで綺麗だが少しばかり趣にかける気がする。
常堅寺
カッパ淵へ向かう途中、常堅寺に立ち寄る。曹洞宗の寺院でカッパ狛犬の寺として知られている。
カッパ淵
カッパ伝説が多く残る遠野で一番知られているのが、常堅寺の裏手に流れる小川の淵である。岸には釣り竿が置かれている。
ホップの生産地
遠野は日本有数のホップ生産地である。現在は主にキリンビールとの契約栽培が行われているが、残念ながら生産農家は年々減ってきているらしい。
遠野ふるさと村
遠野ふるさと村は、江戸中期から明治中期にかけて造られた茅葺屋根の曲り家をそのままの形で移籍して、昔ながらの山里を再現した施設である。映画やテレビの撮影にも多く利用されている。小川が流れ水車がまわる里山をのんびり散策しながら懐かしい空気につつまれるような気がした。
遠野ふるさと村の玄関である「ビジターセンター風樹舎」のレストランで人気メニュー遠野の郷土料理「ひっつみ」がついた「山菜定食」をいただく。
懐かしい農村を再現した場所で昔の生活を垣間見られる。小川が流れ桜や菜の花が咲く里の春である。
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- 大工どんは上流階級の民家
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- 大工どん
- 川前別家は曲がった柱や桁梁等が多く使われていて、建てた大工さんの腕の良さがわかる家
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- 村の風景
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- 大野どんは附馬牛町大野集落の上層農家
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- 村の風景
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- こびるの家
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- 桜とレンギョウ
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- 村の風景
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- 肝煎りの家とは、庄屋さんの家のこと
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- わらを打ったり粉をついたりするための水車小屋
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- 村の風景
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- バッタリ
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- 山里の春
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- 菜の花が奇麗
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- レンギョウ
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- 大工どん前庭で郷土芸能しし踊りを見学
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- 郷土芸能しし踊り
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- ビジターセンター風樹舎へ戻る
福泉寺
ふるさと村の近くにある福泉寺に立ち寄る。真言宗のお寺で桜の頃には奇麗である。
宿泊
遠野駅にほど近い寺町通りにある「民宿りんどう」に宿泊。翌日立ち寄る鍋倉公園にも近く都合が良い宿である。
2016年4月30日(土)晴れ
鍋倉公園
遠野市にある鍋倉山の鍋倉城跡に造られた公園で、遠野随一の桜の名所と言われている。山全体が公園になっている。
鍋倉公園へは車で来ることも出来る。数台の駐車場もある。
五百羅漢
続いて五百羅漢へ。江戸時代に凶作に見舞われた際、大慈寺の義山和尚が多くの犠牲者を供養するために自然の花崗岩に五百体の羅漢像を彫ったと言われている。場所はわかりやすいが、無数の岩に刻まれているため、遠くから見ただけではわかりづらい。
宮守川橋梁
遠野を通るJR釜石線(銀河ドリームライン)では2014年に運行を開始した「SL銀河」が人気を集めている。SL銀河は花巻~釜石間を結び、4両の客車には宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」に登場する星座や動物をモチーフとした絵が描かれている。道の駅みやもりのそばには国道283号線と宮守川をまたぐ宮守川橋梁があり、その特徴的な形から「めがね橋」の愛称で親しまれている。
宮守川橋梁から柏木平駅方向へ少し向かったところ。
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- 快速「はまゆり」
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- SL銀河登場
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- SL銀河
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- C58289 SL銀河
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- 宮守村(現:遠野市)/村章、銀河鉄道、星、鶯、ヤマユリ、赤松をデザインしたマンホール
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- 宮守村(現:遠野市)/村章、鶯、ヤマユリ、ウメをデザインしたマンホール
遠野駅周辺
遠野駅前にはカッパをデザインしたモニュメントがたくさんあるので探しながら散策するのも楽しい。ちなみに遠野市公式キャラクターはカッパをモチーフとした「カリン」ちゃんで、カッパの「カ」と市の花リンドウの「リン」から来ている。
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- 遠野駅
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- 駅前には彼方此方にカッパ
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- ラッピングバス
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- 遠野市観光交流センター「旅の蔵遠野」
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- 駅周辺にある陶板
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- 遠野市/ヤマドリ、イチイ、リンドウ(旧市の花)をデザインしたマンホール
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- 遠野市/リンドウ(旧市の花)をデザインしたハンドホールの蓋
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- 遠野市/めがね橋とSL、市のイメージキャラクター「カリン」ちゃんがヤマユリを肩に担いだデザイン
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- 遠野市/茅葺屋根の建物、市のイメージキャラクター「カリン」ちゃんがリンドウを肩に担いだデザイン
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- 遠野市/民話のふるさと側溝蓋、リンドウ、市のイメージキャラクター「カリン」ちゃんがリンドウを肩に担いだデザイン
橋野鉄鉱山・高炉跡
遠野から笛吹峠を通り釜石方面へ。遠野から釜石にかけての地域は日本の近代製鉄業発祥の地である。中でも橋野鉄鉱山・高炉跡は現存する日本最古の洋式高炉跡で、2015年(平成27年)に世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼・造船・石炭産業」の構成資産として登録された。旧来のたたら製鉄から近代製鉄への第一歩を踏み出した歴史的に重要な場所である。
大槌町
蓬莱島
蓬莱島は大槌湾内にあるひょうたん形の島で「ひょっこりひょうたん島」のモデルになったとされる。
吉里吉里駅
釜石駅管理の無人駅であったが東日本大震災により営業休止となった。有人時代の木造駅舎が残っていたが、2012年2月(平成24年)に老朽化を理由に解体された。
復旧・復興
東日本大震災津波による甚大な被害から5年が経過した大槌町では、民宿などの宿泊施設が徐々に再開し始めている。大槌漁港すぐ近くにあった「民宿六大工」は少し内陸に移動しての再開を果たした漁師民宿である。夕食での「帆立のバター焼」は自家養殖の大きな帆立であった。
「きりせんしょ」と「ひねれっこ」は岩手県(主に盛岡市、花巻市、紫波町、遠野市)で食されている和菓子で、製法、形態など各地によって様々らしい。「道の駅 みやもり」で購入したものを宿で食べてみたが、もちもちとした食感で美味しかった。
2016年5月1日(日)曇り後雨
釜石大観音
釜石市街を散策する。釜石の海と街を見下ろす高台には、大平町鎌崎半島に立つ魚籃観音像がある。
釜石駅
釜石検修庫にSL銀河が止まっていた。
SLの検査・修繕などを行うSL釜石検修庫は星が輝く銀河をイメージした外観である。
仙人峠
遠野市と釜石市の境界の北上山地中にある標高887mの峠である。陸中大橋駅付近で、後ろから来たSL銀河が大きくカーブしていく姿を見送った。
亘理
帰路は宮城県の亘理にある「味ざんまい」で休憩。