四国・佐田岬と歴史情緒ある町・内子
愛媛県の西側に位置する佐田岬半島は日本一細長い半島である。四国最西端の地に建つ白亜の灯台を訪ね、木蝋の町・内子では歴史情緒ある町並みに癒された。旅行途中には牧野植物園、竜串海岸、石垣の里、栗林公園など興味ある場所に立ち寄ることができた。
2018年11月22日(木)晴れ
往路は瀬戸大橋経由で四国へ渡ることにした。途中の山陽自動車道の吉備サービスエリアに立ち寄り朝食を摂った。高知道を通って高知市内へと向かう。
高知県立牧野植物園
最初に立ち寄ったのは高知県立牧野植物園である。牧野植物園は、高知県出身の植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰するため、博士逝去の翌年1958年に高知市五台山に開園した植物園である。広さ6haほどの園内には「牧野富太郎記念館本館」「牧野富太郎展示館」「温室」「土佐寒蘭センター」などの施設がある。広大な「植栽エリア」には西南日本の植物や博士ゆかりの植物など3000種が植えられており、四季折々の花々を見ることができる。
本館と展示館
正門から入り受付を済ませる。本館には牧野富太郎博士の遺品や蔵書を収めた牧野文庫(研究利用のみ可)があり、採集した植物標本、精密に描写された植物画など膨大な資料が収蔵されている。また展示館の常設展示ではその一部が展示されており、博士の偉大な業績を垣間見ることができる。また、展示館中庭には博士命名の植物など、ゆかりの植物が250種ほど植えられている。
植栽エリア
植栽エリアでは四季を通して花々が見られが、今の時期はノジギクやツワブキなどキク科の植物が中心で、花の種類は少なめである。
温室
国内外から集めた貴重な植物や色鮮やかな熱帯花木、熱帯果樹などが植えられている。ジャングルゾーンにはヒカゲヘゴや高木類の群落があり、ダイナミックな風景が見られる。
土佐寒蘭センター
今の時期は丁度、寒蘭の開花時期にあたるため、見事に開花した寒蘭を多数見ることができる。
竹林寺
竹林寺は四国霊場第31番札所で、行基が聖武天皇の命を受け日本国中を探し唐の五台山に似たこの地に創建したと伝えられている。牧野植物園に隣接しているので訪問し易い。
ペンションサライ
今夜の宿は、以前一度宿泊したことがあるペンション「サライ」である。足摺岬の外れにあり決して交通の便がよいとは言えないが、食事が充実していることで宿泊客に人気があるようだ。
2018年11月23日(金)晴れ
足摺岬
翌朝は近くの足摺岬に向かう。足摺岬は四国最南端に位置し、周辺は足摺宇和海国立公園に指定されている。岬の突端にある足摺岬灯台は「日本の灯台50選」にも選ばれている。また日本人として初めてアメリカに渡り測量や航海術などを学んだ後、鎖国時代の日本に帰国し多大な功績を遺したジョン万次郎こと中浜万次郎の銅像が建てられている。
金剛福寺
灯台の反対側、足摺岬を見下ろす丘の中腹には金剛福寺がある。金剛福寺は四国霊場第38番札所で、境内は120,000平方メートルを誇る大道場である。
足摺岬からは海岸線を西の竜串方面へと向かう。まず立ち寄った道の駅「めじかの里土佐清水」は、特産のめじか加工場が裏にあり、工場で製造された製品・土産物を購入できる。「めじか」とはソウダカツオのことで、土佐清水の魚に指定されている。
竜串海岸
竜串地区は足摺宇和海国立公園内に位置しており、サンゴや華やかな熱帯魚が棲息する竜串湾は1970年(昭和45年)に日本で初めて海中公園(現海域公園)に指定された。高知県を代表する奇景として有名な竜串海岸は、2000~1,500万年前に堆積した砂岩と泥岩により形成されており、一周30分ほどの遊歩道を利用して散策することができる。奇妙な形をした岩には様々な名前が付けられている。
- 竜串海岸遊歩道案内図
- 蜂の巣状の岩
- 蜂の巣状の岩
- 見渡すかぎり奇岩が続く海岸
- 波や風によって削られた海食台地は奇岩怪石がいっぱい!
- 欄間石
- 大竹小竹
- 絞り幕
- 額縁岩
- 砂岩中の褐色のノジュールが蛙の大群のようにみえる蛙の千匹連
- 急傾斜した地層
- 天の橋立
- 座頭の昼寝石
- 千畳敷
観音岩と大堂山展望台
竜串海岸から四国西端に位置する大月町に向かう。柏島へ渡る手前にある観音岩展望台に登った。展望台からは太平洋が見渡せるのだが肝心の「観音岩」は真下にあり見えない。遊歩道を引き返して分岐を反対側へ進むと海側に観音岩が見えた。観音岩は高さ30mほどの花崗岩の岩で海から突き出た姿が観音菩薩に似ていることからこの名がついたそうである。さらに車でトンネルまで戻り、大堂山展望台へ移動した。大堂海岸の高台にある大堂山展望台からは東に太平洋、西に豊後水道を一望でき、柏島を見渡せる絶景が広がる。
道の駅 大月に立ち寄った。サツマイモを使ったお菓子「ひがしやま」が名物である。4~5時間かけて煮込んだひがしやまは飴色をした干し芋に仕上がっている。
外泊・石垣の里ミュージアム
さらに海岸線を進み、愛南町に入る。外泊地区の入江に面した急斜面には、石垣を高々と巡らした約50軒の民家が山の中腹まで続き、独特の家並みを形成している。軒に達するほどの石垣は、外洋からの強風や塩害から家を守るために造られたもので、その景観から石垣の里として知られている。精緻に組まれた石垣はまるで城壁のようだ。人がやっと通れる程の狭い通路が続く。
石垣の里入口からすぐのところに石垣の中に屋敷神様(写真中央下の穴)が祀られている。石垣の壁には「遠見の窓」と呼ばれる窪みがある。これは家の中から海の様子を見ることが出来るように作られた窪みだそうだ。
屋敷跡の石垣に「遠見の窓」が残っていた。その窓に縁結びのお雛様が飾ってあった。
集落を登っていくと、憩いの場・観光の拠点として利用できる「だんだん館」がある。石垣の里の眼下に広がる宇和海を臨みながら一服することができるほか、予約をすれば郷土料理も食べることができる。
道の駅「津島やすらぎの里」には日本一大きな樹根太鼓がある。また良質の源泉「熱田温泉」の日帰り入浴施設や室内温泉プールが利用できる。
和霊神社
宇和島の和霊神社は、四国でも大きな祭りのひとつとして知られている「和霊大祭」で有名な神社である。また、ここには「日本一の大鳥居」「日本一の於多福面」「日本一の鼻高面」の三つの日本一がある。
明浜海岸
宇和海に面した西予市明浜町は海まで急傾斜地が迫り、複雑に入り組んだリアス海岸になっている。湾の水深が深く波が穏やかで養殖業に適しているため、真珠の養殖が盛んに行なわれている。
民宿故郷
今夜の宿「民宿故郷」は「あけはまシーサイドサンパーク」内にあるレストラン併設の民宿である。目の前に広がる宇和海を眺めながらとれたての新鮮な海の幸が食べられる。
2018年11月24日(土)晴れ
みかん畑
西予市明浜町は宇和海を南に臨み暖かな気候に恵まれた柑橘類の名産地である。海に面した急な斜面には石垣の段々畑が広がり、多種の柑橘類が栽培されている。畑には収穫用のモノレールが上に向かってくねくねと伸びている。
八幡浜市には、ゆるキャラ「はまぽん」と、愛媛県のイメージアップキャラクター「みきゃん」がコラボしたシールタイプのカラーマンホール蓋が設置されている。「はまぽん」は「八幡浜ちゃんぽん」を食べ、「みきゃん」は両手にタイをぶら下げてトロール船に乗っている。船の前にはカツオとトビウオが跳ね、マストには市章が掲げられている。旧八幡浜市と西宇和郡保内町が合併し、2005年3月に新しい八幡浜市となった。
佐田岬半島
佐田岬半島は、瀬戸内海と宇和海に挟まれた日本で最も細長い半島で、長さは約50kmである。半島の先端は四国最西端に位置しており、佐田岬灯台が建つ。また、半島の付け根付近の北側斜面には四国地方唯一の原子力発電所である四国電力伊方原子力発電所がある。佐田岬半島を横断する国道(佐田岬メロディーライン)沿いの道の駅には、伊方産の特産品や地元産の食材などの販売所があり、雄大な瀬戸内海と宇和海を一望できる。
椿山展望台
灯台までは最寄りの駐車場から遊歩道を20~30分程歩くと到達する。灯台の手前、佐田岬半島の先端部にある椿山展望台は、佐田岬灯台より高い位置にあるため、灯台と豊予海峡、大分県の佐賀関半島を同時に一望できる。
佐田岬灯台
佐田岬灯台は佐田岬半島の先端に建つ白亜の灯台である。灯台敷地の西側には四国最西端の碑が設置されている。
御籠島
灯台の西側にある御籠島(みかごじま)は四国最西の小島で、地元では大島(おしま)あるいは御島(おしま)とも呼ばれているそうだ。現在は灯台から200m程の遊歩道が整備されて陸続きとなっており、容易に島へ渡ることができる。島には旧日本陸軍の砲台跡が残されている。
内子町
内子町は愛媛県のほぼ中央部に位置し、江戸の昔よりハゼの実からできる木蝋生産の中心地として日本各地から職人が集まり、職人の町として名を馳せてきた。歴史情緒ある町並みが人気で、まち歩きが楽しめる歴史保存地区には、伝統的な匠の技を受け継ぐ工芸品店などが集まっている。
内子座
内子座は1916年に大正天皇の即位を祝い創建された芝居小屋である。木造2階建て瓦葺き入母屋作りの純和風様式で、回り舞台や花道、桝席、楽屋などがあり当時の建築技術の粋が集められた。老朽化のため1985年に改修工事が行われ、現在は町内外の芸術文化活動の拠点として活用されている。内子座の内部は、舞台や桟敷席など昔の芝居小屋の雰囲気そのままで、奈落に降りると、木造の「せり」や「すっぽん(小型のセリ)」など舞台の裏方を支える設備を見ることができる。
町並み
JR内子駅から15分ほど北に歩いた八日市・護国地区は、約600mの通りに伝統的な造りの町屋や豪商の屋敷が軒を連ね、江戸から明治時代の面影を残している。
- 内子町ビジターセンター(旧内子警察署)
- 内子町児童館(旧・内子尋常小学校)
- 商いと暮らし博物館(薬屋だった建物をそのまま利用して大正時代の商売と生活の様子を再現)
- 八幡神社
- 旧下芳我家住宅
- 伊予銀行内子支店(旧・内子銀行)
- 大森和蝋燭屋/店舗内部
- 重要伝統的建造物群保存地区(町並保存地区)
床屋「市兼」の店舗には明り取りの「虫籠窓」があり、壁には龍の鏝絵(こてえ)が施されている。店先などに出す縁台(床几(しょうぎ)又はバッタリと呼称する)や入口の大戸、2枚の板戸をすり上げて外側へ吊る蔀戸(しとみど)など町家の特徴が残され、床屋の暖簾(のれん)も風情がある。
本芳我家住宅(重要文化財)
木蝋の生産で財をなした本芳我家の主屋は1889年(明治22年)に建てられ、漆喰塗籠の重厚な建物は、鏝絵(こてえ)と呼ばれる彫刻や海鼠壁などで飾られている。住宅内部は非公開であるが、庭園の一部を見学できる。
木蝋資料館(重要文化財上芳我家住宅)
上芳我家は芳我家の分家で、1861年(文久元年)に現在地に出店を構えた。本家を本芳我家と呼ぶのに対して上芳我家と通称されている。現在は「木蝋資料館上芳我邸」として町が管理運営しており、邸内には展示棟を設け木蝋生産の工程の模型や、重要有形民俗文化財に指定された製蝋用具の一部を展示している。
せだわ(路地空間)
さらに八日市・護国地区の町並みを散策すると、家と家の間には「せだわ」と呼ばれる小道や水路があり、独特の路地空間を呈している。
御宿月乃家
3日目の宿泊先は「御宿月乃家」にした。江戸や明治時代の家並みが残る伝統的建造物群保存地区の中に佇む農家民宿で、自家産の食材を使った料理でもてなしてくれる。炉端での夕食はのんびりとくつろげる。
2018年11月25日(日)晴れ
高昌寺
内子の町並みから程近くにある高昌寺は、室町時代に創建された伝統と歴史のある寺で、石造りの巨大な涅槃像(ねはん仏)がある
続いて道の駅「内子フレッシュパークからり」に立ち寄った。
弓削神社
弓削神社は内子町石畳東地区にある神社で、創建は1369年(應永3年)と伝えられている。社殿を囲む弓削池には屋根付き橋として知られる「太鼓橋」が架けられている。
ここで愛媛県を後にして香川県へと向かう。
栗林公園
今回は栗林公園を訪ねた。栗林公園は、高松藩主松平家の別邸として歴代藩主が修築を重ねた回遊式大名庭園(日本庭園)である。面積は約75haで国の特別名勝に指定されている文化財庭園の中では国内最大の広さである。
日本庭園
順路に沿って南庭側から庭園内を歩くことにした。
- 鶴亀松
- 北湖
- 日暮亭
- 西湖ノ対岸にある石壁(赤壁)と桶樋の滝(おけどいのたき)
- 旧日暮亭の降蹲踞(おりつくばい)
- 室町時代の手法を残す、小普陀(しょうふだ)と呼ばれる築山
- 南湖
- 掬月亭と和船
- 南湖に浮かぶ楓嶼(ふうしょ)
- 南湖と和船
- 広大な池の水源地・吹上(ふきあげ)
富士山に見立てて造られたといわれる築山「飛来峰」は、園内随一のビューポイントである。
- 飛来峰(ひらいほう)から偃月橋(えんげつきょう)を望む
- 杜鵑嶼(とけんしょ)にある「恋ツツジ」と名付けられたハート型のツツジ
- 南湖を望む高台・渚山(しょざん)で小さな松が多く植えられている
- 古理兵衛九重塔
- 芙蓉峰(ふようほう)からの眺め
南庭を一周したので続いて北庭を歩く。南庭に比べると見場所が少ないようである。季節によっては花菖蒲などが見られる。江戸時代、北庭には鴨猟をするための鴨場があり、1993年(平成5年)に鴨場施設を復元した。
讃岐民芸館
最後は讃岐民芸館に立ち寄った。新民芸館、古民芸館、家具館、瓦館の4館からなり、讃岐の民芸品・家具・瓦など約3900点を収蔵し、約990点を常設展示しているという。
- 瓦館では民家社寺で使用されていた日本瓦のうち、特に鬼瓦や飾瓦を展示
- 古民芸館1・2号館では古くから日常使用されていた生活用具を展示
- 讃岐の民芸品を展示
- 馬上で弓を構える那須与一をデザインした高松市のマンホール
鳴門大橋を経由して帰路についた。途中で淡路サービスエリアなどに立ち寄った。