冬支度の金沢散策と茶屋街の夕べ
冬の風物詩「雪吊り」と新鮮な海の幸を味わえる金沢市を訪れた。美術館や記念館なども多く、特に茶道に関連したミュージアムでは貴重な作品を拝見してとても有意義な時間となった。11月中旬から年末ごろまでの期間が旬となる香箱蟹を始め、冬の短い間限定の貴重で魅力的な食材を頂きまさに至福の旅であった。
2018年11月28日(土)曇り
金沢駅
北陸新幹線かがやき507号で上野を出発し12時少し前に金沢駅に到着した。ちょうど昼時、先ずはJR金沢駅構内の金沢百番街・あんとにある「不室屋カフェ」で昼食を済ませた。
不室屋カフェの人気メニュー、ランチタイムにいただける「ふやき御汁弁当」を注文。加賀麩をふんだんに使った料理で、具だくさんの五色汁、治部煮、料理をお弁当仕立てにしたお弁当箱、五穀米ご飯、お麩のしぐれ煮、香の物である。
金沢駅の兼六園口に向かうとまず見えてくるのが、幾何学模様のガラスの天井である。この天井には「もてなしドーム」という名称がつけられている。さらに駅の正面玄関にあたるのが鼓門である。何度見ても堂々とした構えである。
長町武家屋敷跡界隈
徒歩で長町武家屋敷跡界隈を散策する。加賀藩士・中級武士たちの屋敷跡が残り、黄土色の土塀、石畳の小路など当時の面影が残るエリアである。長町を流れる大野庄用水は、古くから人々の生活を支え今もなお街並みにとけこんでいる。
灯篭にも藁のこもが綺麗に巻いてある光景は金沢ならでは。藁をまくのは石が割れたり欠けたりするのを防ぐためだという。雪が積もり灯篭に染み込んだ水が氷点下になると膨張することで石が割れてしまうのである。灯篭によって色々な巻き方があり造園家の個性が出るようである。
野村家を後にして長町武家屋敷通りを歩く。
さらに香林坊方面へ歩き、金沢片町のアパホテルで早めのチェックインを済ませた。
兼六園
雪吊りと紅葉ライトアップが行われている兼六園を見に出かけた。兼六園では11月1日から雪吊り作業が始まる。雪吊りの種類には「しぼり」「みき吊り」「りんご吊り」の3種類があり、兼六園の名木、老樹には一番複雑な「りんご吊り」が施されている。池に浮かび上がっているような光景はとても幻想的だ。
金沢城公園
金沢城公園でもライトアップが行われている。
間もなく師走となるにしては寒さを感じることもなく、十分に楽しんでからホテルへ帰ることにした。
2018年11月29日(木)晴れ
神明宮
香林坊から国道157号を歩き、犀川にかかる犀川大橋を渡ると右手に神明宮と大ケヤキが見えてくる。御神木として守られており樹齢は1000年を超えると言われている。
にし茶屋街
ひがし茶屋街、主計町茶屋街と並ぶ金沢三茶屋街のひとつである。茶屋様式の町家が並ぶ街並みは独特である。
お茶屋の跡地には当時の建物を再現した金沢市西茶屋資料館がある。内部の見学が出来るので素囃子(すばやし)などの展示を見ながらお茶屋遊びの雰囲気に思いをめぐらすのも良い。
寺町寺院群にある忍者寺で有名な妙立寺を訪ねた。
中村記念美術館
本多の森公園の近くにある中村記念美術館で茶道具を鑑賞した。金沢で酒造業を営む実業家で茶人の中村栄俊氏(1908~1978)が創立した財団法人中村記念館に始まる。表千家流の茶道を嗜んだことにより数多くの茶道具を所蔵している。
好きな抹茶茶碗を選んで呈茶(有料)が受けられるので、喫茶室で日本庭園を眺めながら干菓子と御抹茶をいただく。
鈴木大拙館
中村記念美術館から鈴木大拙館まで「緑の小径」と名付けられた散策路がある。木立の中へと木道の散策路を進むと、途中で山道のような道になる。この道を行っていいのだろうかと不安になるが雑木林の奥に鈴木大拙館の壁が見えてくる。
金沢市出身の鈴木大拙は日本の禅の思想を海外に広めた世界的な仏教哲学者である。
松風閣庭園
隣接する松風閣は兼六園作庭のお手本となった庭園と言われている。
緑の小径を中村記念美術館の方へ戻ると、途中で美術の小径へ分かれ県立美術館の裏手に出る。本多の森公園を挟んで反対側には赤レンガ造りの石川県立歴史博物館がある。
いしかわ赤レンガミュージアム
赤レンガは明治から大正時代にかけての代表的な建築様式のひとつで、3棟の赤レンガの建物は「いしかわ赤レンガミュージアム」の愛称で親しまれている。1909年(明治42年)から1914年(大正3年)にかけて旧陸軍の兵器庫として建設された建物で、戦後は金沢美術工芸大学として使用されていた。現在は2棟が石川県立歴史博物館、1棟が加賀本多博物館となっている。
玉泉院丸庭園
百万石通りを金沢城方面へ歩く。金沢城公園の玉泉院丸口から入ってすぐの玉泉院丸庭園を眺める。池泉回遊式庭園で、池には一の島、二の島、三の島という3つの浮島があり、木橋、石橋、土橋を合わせて5つの橋で結ばれている。加賀藩三代藩主・前田利常による作庭から廃藩まで歴代藩主が愛でた庭園の姿を再現したものである。
石垣の上部に滝を組み込んだ特別な石垣で、滝口には黒色の坪野石でV字形の石樋、落水の背後には色紙形(正方形や短冊形)の戸室石を段違いに配している。
金沢城公園
玉泉院丸庭園から階段を上り新丸広場方面へ歩き大手門口へ向かった。散策路の紅葉がちょうど見頃であった。
大樋美術館
金沢城からひがし茶屋街へ向かう途中にある大樋美術館に立ち寄った。館内では初代から現在に至る十一代までの大樋長左衛門の作品が展示されている。350年間にわたって脈々と受け継がれてきた大樋焼は茶道には欠かせない道具となっているようだ。
ひがし茶屋街
ひがし茶屋街は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、にし茶屋街よりも規模が大きく人通りも賑やかである。石畳の両脇には弁柄格子の町屋が並び、江戸時代の雰囲気を残している風情ある街並みだ。弁柄格子はインドのベンガル地方の紅料を使用していることからと言う。またこの細い格子のことを木虫籠(きむすこ)と言うが、言われてみれば「虫かご」のように見える。
主計町茶屋街
ひがし茶屋街から浅野川大橋を挟んで対角線上に位置するのが主計町茶屋街である。ひがし茶屋街同様に木虫籠の出格子が窓の外に付けられている。
本日は純和風旅館木津屋に宿泊。これが今回のメインディッシュである。昼間では味わえない茶屋街なら出羽の魅力を堪能する。
茶屋街の夜は、昼と趣の異なる雰囲気となるのだ。
御料理 貴船は昼4組・夜4組限定のとにかく予約困難な人気店である。金沢市在住の方が世話人の夕食会、一年前から予約をしたとのことである。
2018年11月30日(金)晴れ
美術館めぐり
翌日は金沢21世紀美術館を見学。白くて丸い建物が印象的で地元の子供たちは「まるびぃ」の愛称で呼んでいるという。
美術館の中でも特に人気の高い作品は「スイミング・プール」だという。デッキから見下ろすと微かに水が波立っているように見え本物のプールのようである。水の中に人影が見えるのでどうなっているのか不思議なのだが実はガラス張りになっていて「水面下」から水上が見える。
石川県立美術館は国宝の色絵雉香炉(野々村仁清作)をはじめ数々の名品を展示している。
昼食
東インター大通り森山北交差点の近くにある恵比寿寿司で昼食をいただく。
真鱈の子付けとは、真鱈の身を昆布じめにし、炒り煮した真鱈の卵をまぶしたもので富山の郷土料理である。ねっとりとした身とプチプチとした卵が絶妙な味わいであった。
金沢を充分に満喫したので15時55分発かがやき510号で帰宅した。