陶磁器の街・瀬戸と志摩半島の美しい海岸線
愛知県の北東部に位置する瀬戸から三重県の志摩半島を訪れた。瀬戸は古来から陶磁器の生産が行われ、今なお日本有数の陶磁器の生産地である。また志摩は伊勢志摩国立公園に属し、真珠の養殖で有名な英虞湾や海水浴場百選に選定された御座白浜海水浴場など、豊富な観光資源を有している。
2019年6月1日(土)晴
窯神神社
愛知県瀬戸市は歴史と伝統を誇る陶磁器産業の街として職人文化が色濃く根付いており、「瀬戸物」は陶磁器の代名詞ともなっている。「せともの」にまつわる名所も数多く存在する。窯神神社(かまがみじんじゃ)は、九州有田から磁器の製法を伝えた磁祖・加藤民吉を祀る神社である。境内には民吉像と登り窯を模した珍しい社があり、民吉の遺徳を偲ぶことができる。
窯神神社の北側には広大な陶土採掘場があり、その眺望から「瀬戸のグランドキャニオン」とも呼ばれているそうだ。
深川神社
深川神社は、奈良時代の771年(宝亀2年)に創建された式内社である。境内の宝物館には、瀬戸の焼物の祖といわれる、加藤四郎左衛門景正(藤四郎)の作と伝わる陶製の狛犬があり、国の重要文化財に指定されている。神社境内には、陶祖加藤藤四郎を祀る陶彦神社がある。
深川神社と陶彦社の間には深川奥宮稲荷社がある。神社までの通路には独特の赤い鳥居が連なっている。
法雲寺
法雲寺は、1883年(明治16年)に創設された寺院である。境内には珍しい陶製の梵鐘が置かれている。これは第二次世界大戦中に梵鐘が金属資源として強制供出されてしまったため、代用品として陶製の梵鐘が奉納されたことによるという。
瀬戸の町並み
尾張瀬戸駅は名鉄瀬戸線の瀬戸側のターミナル駅で、環境モデル駅として太陽光パネル発電による電力や、水洗トイレには雨水が使用されている。なお名鉄瀬戸線は歴史的経緯から名鉄の本線には接続していない独立路線となっている。
瀬戸川に架かる宮前橋は、親柱に江戸時代の陶工の姿を描いた染付磁器板がはめ込まれている。欄干中央小柱上には、陶製の狛犬が載せられている。
深川神社一の鳥居の参道沿いに「宮前地下街」と表示された商店街がある。一見するとどの店舗も地上に入口があるが、当初は駐車場の地下に店舗が並んでいたので、「地下街」の名称になったそうだ。
「案内処・集い処らくちん」の建物は、建築当初は道路を隔てた西側の蔵所町にあり、蔵所交番として使われていた。蔵所ミュージアム建設(平成17年開館)に伴い、建設当時の外観を保ったまま現在地に移築復原され、観光案内所「案内処・集い処らくちん」として再活用されている。
名鉄尾張瀬戸駅から東側には陶器の販売店が並んでいる。店頭に並ぶ陶磁器を眺めるのも風情がある。
瀬戸蔵ミュージアム
瀬戸蔵ミュージアムは、瀬戸の観光拠点施設「瀬戸蔵」の2・3階フロアに、焼物の博物館として2005年3月に開館した。2階部分には、瀬戸物の大量生産で活気のあった時代の瀬戸のまちの象徴として、旧尾張瀬戸駅、陶房(モロ)、石炭窯、煙突などを配置している。3階部分では1000年以上の歴史がある瀬戸焼の変遷を大パノラマ展示で紹介している。
- 瀬戸蔵
- せとでん車両「名鉄モ754号」
- 旧尾張瀬戸駅
- 旧尾張瀬戸駅、集積場、やきもの工場を再現したミュージアム館内
- 石膏型
- 土ねりき
- フィルタープレス
- 石炭窯と煙突
- 石炭窯
- やきもの工場(モロ)
- 「古墳~江戸時代」のやきもの展示
明治時代前半期にアメリカやヨーロッパで開催された万国博覧会に出品するためにつくられた大型の染付作品が目を引く。
赤津窯の里
瀬戸では古来から陶器造りが行われており、日本六古窯の一つに数えられる。赤津焼(あかづやき)は、瀬戸焼の中でも赤津周辺で焼かれる伝統的な釉薬を使った陶器の事である。赤津地区には現在も多くの窯元が点在し、志野、織部、黄瀬戸など7種類の釉薬と、印花、櫛目など12種類の装飾技術を用いた伝統的な手法により陶器を生産している。
「晴峰窯」は、赤津焼工業協同組合理事長で、伝統工芸士・梅村晴峰氏の窯元である。当日は赤津窯の里めぐりの途中に突然立ち寄ったにも拘わらず、梅村氏の制作作業を見学させて頂いたり、赤津焼の話をいろいろ聞かせて頂いた。
窯垣の小径
窯垣は、窯道具を積み上げて作った塀や石垣の呼称で、窯垣をつないだ約400mの細く曲がりくねった坂の多い路地が「窯垣の小径」である。小径沿いには洞町の歴史や文化を知ることのできる「窯垣の小径資料館」や「窯垣の小径ギャラリー」がある。
洞本業窯
本業窯は連房式登り窯で、磁器を焼成する丸窯とともに瀬戸を代表する窯である。水瓶、水鉢、こね鉢などの本業製品(陶器)を焼成する窯として、昭和54年まで使用されていた。窯は4連房で、全長14m、最大幅7mである。
陶祖公園
陶祖公園は、瀬戸陶業の祖とされる「加藤四郎左衛門景正(藤四郎)」の業績を伝える「陶祖碑」を中心とした公園である。展示館に収められた陶製の六角陶碑は、高さ4.1mで世界最大規模を誇る。展示館前に置かれた左右一対の志野焼燈籠は、高さ2.85mで国内最大級である。
民宿森源
瀬戸市から伊勢自動車道経由で宿泊先に向かう。今回の宿泊先は、志摩半島西端の御座海岸にある、民宿森源である。宿の周辺は道が狭いため、車は近くの駐車場までとなる。
夕食には海辺の宿ならではの海の幸が並ぶ。
当日は丁度、英虞湾を隔てた伊勢市の浜島海浜公園で「伊勢えび祭り」が開催されると聞きつけ、夕食後に御座市場近くの海岸まで出て花火を見物した。
2019年6月2日(日)曇り
麦埼灯台
志摩半島の最南端に位置する麦埼灯台へ向かう。最寄りの片田漁港から先の道路はやや細いが案内があるので迷わずに到着。灯台の高さは16.4mである。1975年12月に設置、点灯された。
大王埼灯台
大王埼灯台は、志摩半島の大王崎の突端に建つ中型灯台である。国の登録有形文化財に指定されており、「日本の灯台50選」にも選ばれている。観光客も多く、遊歩道には真珠や海産物の土産物店が並ぶ。昭和2年10月に設置、点灯され、高さは23mである。
伊勢志摩サミット記念館
英虞湾の遊覧船に乗るため賢島へ移動する。乗船時間までに時間があるので、賢島駅に直結する伊勢志摩サミット記念館に入った。2016年の第42回先進国首脳会議(G7伊勢志摩サミット)開催を記念して2017年5月にオープンしたものである。記念館ではサミットの概要や実際に使用された円卓や椅子、各国首脳等への贈呈品等の紹介や展示を行っている。
英虞湾クルーズ
英虞湾のリアス式海岸特有の海岸線は、伊勢志摩国立公園を代表する風景のひとつである。英虞湾を船で遊覧するには、定期運航している志摩マリンレジャーか賢島遊覧船組合のいずれかを利用するのが手軽だ。今回選んだ賢島遊覧船組合の「英虞湾・島めぐり」では、複雑に入り組んだ入り江の中を小型船で航行する。賢島の歴史や裏話などを交えた船長の愉快な解説が楽しい。
- 唯一の個人所有の島「大高崎島」干潮時に渡れる小島
- 釣り用いかだ
- エスペランサ号 / 定置網
- 遊覧船からの眺め
- 多徳島のミキモト真珠養殖場
- 賢島と真珠養殖いかだ
- サミット会場の賢島「志摩観光ホテル」
- 遊覧船「エスペランサ」
- 賢島遊覧船組合の遊覧船
- アコヤガイが埋め込まれた、遊覧船乗り場付近の側溝蓋
横山展望台
横山展望台は、英虞湾に浮かぶ60の小島と海岸線が複雑に入り組んだ英虞湾を一望できる展望台である。遊歩道が整備され、展望テラス、パノラマ展望台、見晴らし展望台、英虞湾展望台の4か所の展望台から、日本有数のリアス式海岸美を誇る絶景が楽しめるため、人気のスポットになっている。
安乗埼灯台
安乗埼灯台(あのりさきとうだい)は、志摩半島の安乗崎の突端に立つ白亜四角形の中型灯台である。国の登録有形文化財に指定されており、「日本の灯台50選」にも選ばれている。1873年に建設されたときは木造の八角形であったが、1948年に現在の四角形型鉄筋コンクリート造に立て替えられた。高さは12.7mである。