本州最北端の下北半島、来さまい
本州最北端に位置する下北半島を訪れた。奇岩が立ち並ぶ仏ヶ浦や、霊場として知られる恐山があり、寒立馬の生息地でもある。また風力や原子力などエネルギー関連施設も多く立地している。他にも三内丸山遺跡では縄文時代の風を感じ、秋田では稲刈り間近の田園風景を見る機会にも恵まれた。
2012年9月15日(土)晴れ
川内川渓谷
八戸を経由してさらに北へ進み、むつ市に入る。陸奥湾を左に見ながら海沿いの道を進み川内地区へ向かう。川内川渓谷は川内川に沿う渓谷で、4.4kmにわたって遊歩道が整備されている。川内川にはあじさい橋・セキレイ橋・あすなろ橋が架かっており、途中には展望スポットもある。その中の一つセキレイ橋から大滝を眺めることにした。大滝と聞いて落差の大きな滝を想像していたのだが、落差はそれほど大きいわけでもなく、どちらかというと緩やかな雰囲気だ。
川内ダム
川内川渓谷から仏ヶ浦に向かう途中には川内ダムがあり、ダムの堰堤を歩くこともできる。すぐ傍には道の駅かわうち湖があるので、こちらにも立ち寄った。地元の農産物なども並んでいる。そして川内湖畔には休憩コーナーがあり、一息入れるにもちょうど良さそう。
仏ヶ浦
道の駅を後にしてしばらく進み、津軽海峡に面する仏ヶ浦の駐車場に着いた。海岸へと続く遊歩道から階段を下りていくと木々の合間から海と岩が見えてくる。仏ヶ浦は奇岩が建ち並ぶ景勝地であるが、仏ヶ浦の全体像は海上からでなければ見るのが難しいのである。今回は現地でたまたま遊覧船を見つけたので、乗船して沿岸から仏が浦を眺めることにした。所要時間は30分ほどで、船の人が岩の名前を解説してくれる。海の色はエメラルドグリーンに近くて海底もよく見えた。海底にはウニがたくさん張り付いていた。
- 海岸沿いに巨岩・奇岩が建ち並ぶ景勝地
- 遊歩道入口には「熊出没!注意」の看板
- 遊覧船の案内
- 遊歩道の階段を降り浜に到着、極楽浜と天龍岩
- 遊覧船に乗り込み海から眺める
- 左に五百羅漢/右に天龍岩
- 十三仏
- 蓮華岩
- 海の色はエメラルドグリーン
- 干潮時なので水面から岩が浮き出ている
- 大自然の造形、巨岩・奇岩が並ぶ
- この辺りで船はUターンをしてもとの桟橋へ引き返す
- 観光船 夢の海中号、桟橋に到着
- 海底の岩に張りついているウニ
観光船を降り、今度は徒歩で極楽浜を散策する。見上げるほどの巨岩や奇岩が立ち並ぶ間を縫うように歩いて行く。海上からの眺めとはまた雰囲気が違い、自然の造形美を間近に観じられるのがよい。そして岩場を乗り越えて海岸沿いをさらに奥に進むと、三方を岩に囲まれ干潮時にしか行かれない場所があった。その奥には「不老長寿の水」と呼ばれる湧水があり、飲むこともできる。この場所は、時には水の中を歩かねばならないらしいが、今回はそのようなこともなくたどりつけた。
- 如来の首
- 仁王の顔
- 巨岩の中に通じる道
- 岩場には沢山の貝が…
- 干潮時でも海水が残り歩きづらい、奧に湧水がある
- 「不老長寿の水」と呼ばれる湧水
- 一つ仏、岩をわたり歩けるのはこの辺りまでなので引き返すことにした
- 天竜岩の後に桟橋がある
- 桟橋への板道
佐井村
仏ヶ浦散策を終えたあたりでちょうどお昼時になった。海岸沿いの道を少し下った場所にある、ぬいどう食堂で「歌舞伎丼」を食す。事前に聞いていたとおり、名物のウニ丼は8月いっぱいで終わり。ウニの時期を過ぎると味が落ちてしまうので出していないのだそうだ。もし食べ逃した場合は来年まで気長に待つことになる。
本州最北端の大間に向かう。その途中にある民家の軒先には、祭りの飾りが見られ、道端には山車も出ていた。これは江戸時代から300余年の歴史ある佐井村最大の行事(10月14~16日)八幡宮例祭典であり、準備の真っ最中だったようだ。
大間崎
大間は言わずと知れたマグロ漁港であり、本州の最北端に位置している。その先端部には目を引くマグロと腕のモニュメントが並んでいる。ちなみにこのモニュメントは「マグロの一本釣り」を表現しているらしい。大間には大型観光バスも何台かやってきており、観光客がモニュメントの前で順番に記念撮影をするほど賑わっていた。
恐山
海沿いの大間から、内陸部にある恐山に向かう。峠を越えて恐山に近づくと、だんだんと硫黄の臭いが強くなってくる。そして硫黄臭だけでなくどことなく霊的な雰囲気が漂っているような気もする。恐山では霊を呼ぶイタコと呼ばれる人が活躍しているが、実際に霊を呼んでくれる儀式は毎日行われるわけではないようで、今回は見かけなかった。入山すると温泉に立ち寄り入浴もできる。
恐山菩提寺の境内には四つの温泉(古滝の湯・冷抜の湯・薬師の湯・花染の湯)があり共同浴場として利用されている。白濁した硫化水素含酸性緑ばん泉でそれぞれに効能があるそうだ。せっかくなので、ここで立ち寄り湯。
薬研温泉
だいぶ日も暮れてきた。恐山への分かれ道まで少し戻り、本日は薬研温泉の民宿あすなろに宿泊。
2012年9月16日(日)晴れ
尻屋崎
下北半島の北東端、尻屋崎に向かう。薬研温泉を後にして少し町中に入ると、このあたりでも前日に見たような祭りの山車が繰り出していた。普段はそれほど人通りも多くないのではないかと思うのだが、今日は前日に比べても町の人々の姿が多く見える。
しばらく左手に津軽海峡を見ながらむつ市の海岸沿いを進む。結構大きな港があり、道の左右にも大きな工場のようなものが見えてくる。その中に大がかりな盛り土がなされている場所があり、はて何の施設だろうかとよく見てみたところ、使用済み核燃料貯蔵施設が建設中である。日本に原子力発電所は数多くあれど、放射性廃棄物の貯蔵施設というのはここばかりである。さて、ここまでは細く曲がりくねった道なのだが、貯蔵施設の建設現場を過ぎたあたりで、突如として広々とした直線道路になる。まさにこれが東通村に入った瞬間である。
しばらく進むと放牧場のゲートがあり、その先に尻屋崎の灯台が見えてくる。ゲートを抜けたところが寒立馬の放牧地で、何頭かの寒立馬が連れだって草を食んでいる。時間帯によっては灯台のすぐそばまでやってくるようだが、灯台を訪れたときには姿が見えなかった。
- 白亜の灯台、日本の灯台100選
- 太平洋と津軽海峡の分岐点に建つ尻屋埼灯台
- 尻屋埼灯台周辺は寒立馬の放牧場、寒立馬の落とし物にはキノコが…
- 東日本大震災の漂流物が流れ着いたのだろうか。海外沿いには家電製品なども…
- にわかに走り去る馬
- 草を食む寒立馬の親子か
尻屋崎からヒバの埋没林へ向かう。途中で尾根筋に並ぶ風車が見える。岩間風力発電所「岩間ウィンドファーム」である。
ヒバの埋没林
続いてヒバの埋没林を歩く。かつてはヒバの林だったが、何らかの原因で砂地に覆われ、立ち枯れたヒバが残ったと言われている。原因として思い当たるものは津波ぐらいなのだが、実際のところはどうなのだろうか。
東通村
東通村というのは一昔前まで道路の整備状況が悪く、役場すら村外に置かれていたそうだが、現在は奇抜なデザインが目を引く役場が置かれている。
陸奥湾
太平洋側から冷水峠を越えて陸奥湾側に移動し、JR大湊線に沿って野辺地を目指す。野辺地では常夜灯に立ち寄った。
野辺地から青森市街へ。道の駅ゆーさ浅虫温泉に立ち寄り「東北パスポート」を入手した。東北パスポートというのは、現在東北地方で行われている東北観光博キャンペーンで使うためのアイテム。各地を巡ってスタンプラリーのようにスタンプを集める仕組みになっている。
三内丸山遺跡
青森市内に入る。日本を代表する縄文時代の遺跡として知られる三内丸山遺跡に到着。保存状態が良いため1992年より本格的な発掘調査がなされたという。現在では竪穴式住居などの建物が復元され、縄文の遺跡を体験できる公園として整備されている。日本を代表する遺跡でありながら入場料無料でもあるせいか、観光客の姿も多く見られた。
竪穴式住居は地面を彫り込んで作られており中央には炉があり、内部は広く涼しい。
長さが10m以上のものを大型住居跡と呼び、集会所、共同作業所、共同住宅などと考えられているようだ。
南盛土という場所は、竪穴住居や大きな柱穴などを掘った時の残土や排土や灰、焼けた土、土器・石器などの生活廃棄物を捨てた場所らしい。何度も繰り返されることに小山となったようである。土砂が水平に堆積していることから整地をしていたと考えられ、土器・石器、土偶やヒスイ等が出土した貴重な遺産である。
遺跡に併設されたさんまるミュージアムでは土偶など出土品の展示がなされており、縄文時代のムラの暮らしを多角的に感じることができた。
青森駅
みちのくの終着駅、青森駅に到着。新幹線が新青森まで延伸された影響もあり、近年は青森駅の再開発が盛んに行われている。
- 青森ベイブリッジの長さは1219m
- 東口駅舎と東口広場
- 青い森鉄道イメージキャラクター、モーリー
- 駅近くの休憩場所は整備中だった
- 青森の陸奥湾沿いに下北半島と津軽半島の二大半島を走行する列車、リゾートあすなろが入線
青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸は、1988年に廃止された青函航路に就航(1964年~1988年)していた八甲田丸の船体をほぼ往時のまま利用して展示した博物館船である。現在も往時のごとく岸壁に繋留されている。
大湯環状列石
青森駅周辺を散策した後、青森から本日の宿泊地、秋田の大湯温泉に向かう。大湯温泉は大湯川沿いに自然湧出した開湯800年の歴史ある温泉だ。昔から「いで湯の里」「湯けむりの里」として親しまれ、江戸時代にはこの地をおさめていた南部藩主の保養温泉地に指定されていたという。今回は大湯温泉近くの大湯環状列石に立ち寄ることにした。縄文時代後期(約4,000年前)の遺跡で、縄文時代の雰囲気を再び感じながらの見学であった。
大湯温泉
大湯温泉の岡部荘に宿泊する。敷地内に5カ所の源泉を持つ、100%源泉掛け流しの湯が魅力の宿だ。地元素材の料理、馬刺や鹿角牛、きりたんぽに稲庭うどん等、秋田の味がいっぱいであった。
2012年9月17日(月)晴れ
秋田内陸縦貫鉄道
秋田内陸縦貫鉄道内陸線に沿って角館に向かう。秋田内陸線は、秋田県の鷹巣と角館とを南北に結ぶ第三セクター路線である。経営状況の厳しさから、幾度となく存廃が議論されているそうで、沿線では「乗って存続しよう」という運動があるそうだ。黄金色に輝く田園地帯を進む列車のある風景が消えてしまうとすればどこか寂しいところではある。
仙北市
角館に到着。もろこし庵の工場売店で生もろこしを購入した。
田沢湖駅前にある田沢湖市(たざわこいち)にて昼食。順番待ちで呼ばれるまでの間に農産等の買い物を先に済ませておいた。コシのある滑らか食感で喉ごしの良い蕎麦である。
道の駅雫石あねっこで農産物などを購入し、帰路についた。