秘境・黒部ルートと能登半島めぐり
長野県より大町・扇沢駅で黒部ルートと糸魚川ルートに別れて富山県に出た後、2日目以降は能登半島を巡った。合流地点は宇奈月駅であった。黒部ルートというのは黒部川第四発電所を見学する特別コースである。能登半島は主に海岸線に沿って移動し、見附島や千里浜なぎさドライブウェイなどを訪れた。
2012年9月27日(木)晴れ
扇沢から黒部ダム
扇沢から関電トンネルトロリーバスに乗り、黒部ダムに到着した。黒部ダムから宇奈月へ抜けるため、トロリーバスはもちろん片道切符である。
黒部ダムを眺める
まずはダム展望台に登って黒部ダムを上から眺めてみる。毎度のことながら黒部峡谷にこれだけのダムを造ったことについては、時代の要請があったとはいえ、感心するばかりだ。天気も良く、山の中腹には立山ロープウェイの姿も見られた。ただし水位がだいぶ少ないこともあり遊覧船は運休だったようだ。
黒部ダム巡りとスタンプラリー
つづいてダム展望台から階段を下りレストハウスへ向かう。今回はだいぶ時間に余裕を作っておいたので、堰堤を歩いてダム周辺をぶらぶら観光しつつ、あらかじめ準備しておいたスタンプラリーを順番に回っていく。スタンプラリーは扇沢駅や黒部ケーブルカーの黒部湖駅など全部で10ヶ所。これら全てを回り、記念に黒部ダムオリジナルの「うまい棒」をゲットできた。
- スタンプラリー記念黒部ダムオリジナル
- 工事には大型のケーブルクレーンが使われたという
- 黒部湖の様子。水位は146mだった
- 堰堤を歩いて反対側へ
- ケーブルカーや遊覧船にも乗れる
- 後ろが黒部湖
- 黒部ダムレストハウス。ダムカレーが名物
黒部ルート見学会
次第に黒部ルート見学会の集合時間の10時30分が近づいてきた。集合場所である黒部ダム駅の駅長室前に行くと、それらしき数人の姿があり、主催者側の案内人もすでに待機していた。参加者の顔ぶれは1人参加から4人のグループまで様々。集合時間の少し前に参加者全員が集まり、黒部ルートについての簡単な説明を受ける。 持ち物検査の後、貸与されたヘルメットを着用して準備完了。いよいよ黒部ルートの始まりだ。
黒部トンネル
左手に関電トンネルトロリーバス黒部ダム駅の乗り場を見ながら進むと、すぐ右側に黒部トンネルの入口がある。ここにはすでに黒部ルート参加者専用の大型バスが到着していた。黒部トンネル10.3kmの道のりはこのバスでの移動となる。バスの中では走行中の黒部トンネルについての説明があり、黒部トンネルの工事が順調に進んだこと、併行して水路トンネルが存在する話などを聞きながら進む。
タル沢横坑
トンネルの途中のタル沢付近で一旦途中下車。ここには横坑があり、ちょうど劔岳が見える場所なのだという。 案内人の方が順番に記念撮影してくださるので、意外にも和やかな雰囲気。
インクラインで発電所へ
再びバスに戻り終点の作廊谷まで黒部トンネルを進む。作廊谷でバスを降りると目の前にインクラインの乗り場がある。インクラインというのは黒部川第四発電所へ作業員や荷物を運搬するための装置で、構造としてはケーブルカーとほぼ同じ。ただしケーブルカーとインクラインでは安全管理などの管轄が違い、ケーブルカーは国土交通省の管轄であり、インクラインは厚生労働省の管轄だそうだ。 実際にも大きな箱型の輸送機械で、発電装置の輸送に使われているという。
- インクラインに乗り込む。上部は機械室
- インクラインの時刻表
- 斜坑内部ですれ違う
- インクラインの説明。富山県側からの輸送力では足りず、発電設備は全て長野県側から運び込まれたという
- インクラインで下ってきた斜坑と、インクライン下部の横にある広い空間。
- インクライン下部駅
発電所内部へ
こうして黒部川第四発電所へ到着した。まず会議室で発電所の説明などを受けた後で発電機室の見学となる。黒部川第四発電所は、発電設備の全てが地下に作られている完全地下発電所で、送電線の引き出し口が唯一の地上設備なのだという。
発電機室へ
会議室を出て発電機室に入ると、地下であることを忘れてしまうほどの広い空間(幅22m、高さ33m、長さ117m)が広がっていた。発電機は4台設置されており4号機のみが発電中だった。上部にクレーンがあり、点検の際にクレーンを使って発電設備を引き上げるため、このような広い空間が必要なのだそうだ。
- これが発電機室だ
- 天井近くに設置されたクレーンと、実際に使われているペルトン水車
- 記念撮影も可能
- 現在、制御室は全て下流の愛本にて遠隔操作されている
- 水車の見学
- 水車、発電機ともに日立製
- 高速で回転している
- 通路に貼られていたもの。プチ発電とは何だろう?
上部専用鉄道
黒部川第四発電所前駅からはバッテリーカーに乗車して上部専用鉄道に入り、黒部川下流の仙人谷方面へ向かう。
発電所から仙人谷
仙人谷まで進みトンネルを抜けたところで途中下車。進行方向左側に仙人谷ダムが見える。仙人谷ダムの右下に湯気が立ち上っている場所があるのだが、後述する高熱隧道部分の温水が出ているのだそうだ。ちなみに黒部川に沿った登山道である水平歩道では仙人谷ダムの上を渡る。
仙人谷から欅平上部
黒部ダムから仙人谷までのルートが第二次大戦後に建設されたものであるのに対して、仙人谷から欅平までのルートは戦前に建設されたものである。この途中の阿曽原付近が高熱隧道と呼ばれる高温区間で、その温度は掘削中に165℃にも上り、過酷な建設作業が行われた場所として知られている。その後対策が施されたことで温度は下がったが、今回トロッコ(耐熱車両)で高熱区間を通過する際にもトロッコの窓ガラスは曇っていた。建設当時の環境は高熱隧道以外にも、冬場の泡雪崩により宿舎が飛ばされる事故が発生し多数の犠牲者が出るなど、非常に危険なものだったという。
欅平上部展望台と堅坑エレベーター
正面に堅坑エレベーターがあるのだが、エレベーターに乗る前に奥の欅平上部展望台へ。この展望台からは後立山連峰が一望できるのだ。大岩壁をもつ奥鐘山も間近に見ることができる。展望台を見学した後は先ほどの堅坑エレベーターに乗る。標高差は200mで貨車を運ぶことができ、エレベーターとしては国内でも最大級のものである。
- 左から中背山と背後に白馬岳。中央が鑓ヶ岳と天狗ノ頭。右手前が奥鐘山
- エレベーターの奥で充電中のバッテリーカー
- シンクがポツンと設置されている
- 堅坑エレベーター上部から一気に200mを下る
- ドアが開いても見た目がほとんど変わらないが、標高は間違いなく600mになっている
- こちらも、欅平上部駅と見た目がほとんど変わらない欅平下部駅
- 欅平駅から黒部峡谷鉄道のリラックス客車が入っており、これに乗り込む
- スイッチバックを経てトンネルの外へ
- 欅平駅に着いた
- 入れ替え作業中
- 黒部ルート見学会が無事に終了
欅平周辺を散策
少し時間をとって欅平を散策した。紅葉の時期でもないため、観光客はそれほど多くないのかも知れない。
- 奥鐘橋は黒部川本流に架かる朱塗りの橋(長さ86m、高さ34m)
- 黒部川第三発電所
- 岩壁を削って歩道を造った祭に出来たもの。頭上を覆う岩が下を通る人をのみ込まんばかりの迫力
- 脇の階段を下りると河原展望台があり、奥鐘橋を下から眺められる。足湯もある
- 猿飛峡は省略
- 宇奈月ゆきの列車
- 途中、数カ所で停まる
千国街道
扇沢から別かれてこちらは白馬・糸魚川コースである。仁科三湖(木崎湖・中綱湖・青木湖)を眺めながら千国街道(糸魚川街道)を走り先ずは白馬町へ向かう。
親不知
ほとんど北陸自動車道で通過してしまう親不知だが、今回は時間の余裕もあるのでのんびり国道8号線で宇奈月に向かうことにした。道の駅「親不知ピアパーク」にも立ち寄ってみた。
宇奈月
宇奈月駅で黒部ルートと合流だが早めの到着なので宇奈月ダムへ行ってみた。道路があるのは宇奈月ダムの少し先までで、その先は言うまでもなく黒部峡谷鉄道が唯一の交通手段である。
やまびこ展望台からは鉄橋を渡るトロッコ電車の姿が一望のもとに見渡せるので撮影スポットとして人気である。
氷見温泉
宇奈月駅から宿泊地・氷見へ向かう。源泉掛け流し100%の温泉と氷見の新鮮な海の幸が味わえる宿「元湯 げんろく」に宿泊。
- 前菜(バイ貝煮、海老マヨネーズ焼き)酢の物(アオリイカの霜降り、もずく)焼き物(サワラの味噌漬け、さつま芋)造り
- アツアツの料理
- 天ぷら(海老、茄子、蓮根、獅子唐)
- 夕食
- オリジナルデザート
- 氷見温泉
2012年9月28日(金)晴れ
氷見の日の出
天気と時期が良ければ立山連峰をバックに日の出を拝めるらしいのだが、この日はあいにく曇り気味。日の出は地平線からではなく雲の上からだった。ちょうどイカ釣りをしている人がいたので聞いてみると、前日は雲が全くなく、大変良い見晴らしだったそうだ。
宿に戻り温泉で暖まってから朝食とした。温泉でリフレッシュした後の朝食はなんとも美味しいものだ。
氷見から輪島へ
輪島の朝市を目指す。穴水までは海岸沿いをゆく。のと鉄道の西岸駅に設置されているの駅名標の一部が「湯乃鷺」に変更されていると聞き立ち寄ってみた。「花咲くいろは」という作品に登場する「湯乃鷺駅」が西岸駅をモデルにしている縁なのだという。
七尾湾付近で行われたボラ漁に使われた櫓で、現在は観光用に残されている。ボラは警戒心が非常に強いため、漁師は櫓の上からボラの群れを見張り、網に入るのを見計らってすぐさま引き上げる漁だ。
輪島
よく知られている朝市で、通り沿いに多くの出店が立ち並ぶ。通行人も多く大変賑わっていた。魚介類を扱う店、野菜類を扱う店など様々。とても活気がある朝市であった。
白米の千枚田
白米の千枚田は、主に白米町の国道249号と海岸との間に広がる棚田で、その景観が広く知られている。今回はすでに稲刈りが行われた後のため稲穂が無く、景観的な寂しさもあるが、棚田特有の造形美は健在だった。一番小さな田んぼは…50×52cm程だという。
曽々木海岸
硬い流紋岩が海蝕によって複雑な模様や巨岩・奇岩となり海岸に点在している。岩の真ん中に直径2m程の穴が開いている奇岩は「窓岩」と呼ばれている。時期によっては日本海に沈む夕陽が「窓」から見えるらしい。
曽々木海岸から少し内陸に入り、入母屋造茅葺き屋根の2軒の旧家・上時国家と下時国家に寄ってみた。源平壇ノ浦の戦いで敗れた平家一門・平時忠の末裔の豪壮な邸宅である。
揚げ浜塩田
約500年前とほとんど同じ方法で、ミネラル豊富な天然塩が作られている。塩田とは塩を作るための土地で、岩盤の上に粘土を敷き固め、その上に砂をかぶせて作ると言う。揚げ浜式とは、人力で海水をくみ揚げ塩田に撒布する製塩法。
少し行くと、珠洲市の仁江海岸で受け継がれてきた「揚げ浜式」の塩づくりを今に伝える道の駅がある。塩作りの資料館のようなものも併設されている。
道の駅すず塩田村から珠洲岬へ向かう途中にゴジラ岩がある。非常に小さく見つけにくいのでうっかりすると通り過ぎてしまいそうだ。
珠洲岬
道の駅狼煙から徒歩10分ぐらい、坂を登ると禄剛埼灯台に到着する。能登半島の最先端で、ちょうど外浦と内浦との接点にあたり、海から昇る朝日と海に沈む夕陽が同じ場所で見られることで知られている。
見附島
弘法大師が布教のために、佐渡から能登へと渡る際に発見したといわれている。最初に「目についた島」というのが名前の由来のようだ。先端部分が突き出た姿から軍艦島とも呼ばれている。
恋路海岸
悲恋の伝説が伝えられ、見附島から恋路海岸までの3.5kmの海岸線は「えんむすビーチ」と言われている。
千里浜なぎさドライブウェイ
千里浜なぎさドライブウェイは日本で唯一「一般の自動車が走れる砂浜」としての知られている砂浜である。通常、他の砂浜ではタイヤが埋もれてしまうため走れないのだが、この砂浜は違う。打ち寄せる波を眺めながらドライブするのはなんとも不思議な感覚だ。
千里浜やわらぎ温泉
夕食を眺めた後は、本日宿泊するホテルウェルネス能登路へと向かう。
2012年9月29日(土)晴れ
能登金剛・巌門
能登金剛は能登外浦の荒波に削られて出来た断崖や岩の迫力が目の前に迫り来る。巌門の散策道で、ぽっかりとあいた洞の傍まで降りるとまた違う風景が広がる。
世界一長いベンチ
国道249号線沿いにある道の駅「とぎ海街道」の駐車場脇から階段を上ると、ギネスブックに登録されている「世界一長いベンチ」がある増穂浦海岸に出る。時間があるときはベンチに腰掛けのんびりと夕陽を眺めるのがいいそうだ。
能登金剛・ヤセの断崖と義経の舟隠し
ヤセの断崖は2007年の地震により切り立った崖の先端部分が崩落してしまったので、現在はその上部にある柵越しからかろうじて残った部分を見るだけとなってしまった。
ヤセの断崖から5分ほどのところに義経の舟隠しがある。源義経が48隻もの舟を荒波から隠したという伝説を持つ入江だが…下をのぞき込むとやはりぞっとする。
県道49号線沿い
ヤセの断崖から県道49号線を少し南に走ると棚田ビュースポットの案内が目につく。駐車場と展望台があるので立ち寄ってみた。海岸段丘にある棚田で、その数は180枚あるとの事。
氷見・雨晴海岸
晴れた日には富山湾越しに立山連峰の山々を望むことが出来る景勝地だ。海岸線のすぐ横を走るJR氷見線の撮影ポイントでもあるので立ち寄ってみた。
帰宅
氷見から北陸自動車道へ入る途中に富山で、富山ライトレールに遭遇した。のと鉄道には廃線の噂が立つ一方、富山ライトレールは近年見直されつつある路面電車として、かなり頑張っているという印象を受ける。車内から撮影してみたが…なかなか難しい。
北陸自動車道を糸魚川で降りお決まりのコース、白馬村を通っての帰宅とした。白馬村で八方温泉に立ち寄り、いつものお蕎麦屋さん「蕎麦酒房 膳」で休憩してから一路自宅へ。