亜熱帯の原生林が広がる奄美大島
鹿児島県の奄美大島は温暖な気候と手つかずの自然が残る「東洋のガラパゴス」と言われている。特別天然記念物アマミノクロウサギ(希少野生動植物種)やルリカケスは有名であるが、そのほかにも多くの動植物が生息している。生きた化石といわれる巨大なヒカゲヘゴなどの亜熱帯植物が茂る金作原(きんさくばる)原生林を散策した。
2020年1月11日(土)曇り
羽田空港から奄美空港へ
今回訪れた奄美大島は、鹿児島本土と沖縄の中間に位置し、沖縄本島、佐渡島に次ぐ大きさの離島である。羽田空港からの直行便であれば約2時間30分と比較的行きやすい。
奄美大島は島の大部分が森であり西表島に次いで2番目に広いマングローブ林を有している。アマミブルーと言われる透明度の高い海には豊かな珊瑚礁が広がっている。豊かな森が豊かな海を育むと言われる所以ではないだろうか。
予約したレンタカーで島の北部を目指した。
土盛海岸
透明度が高く澄んだ青い海はブルーエンジェルとも呼ばれ、特に晴れた日には素晴らしい眺めと言われている。
あやまる岬
あやまる岬は空港から北へ10分位のところにある奄美を代表する絶景スポットで、正面には太平洋が広がり笠利崎や土盛海岸が一望できる。
笠利崎
笠利岬灯台は奄美本島最北端の地・笠利崎の突端にある灯台で、地元では用岬灯台と呼ばれている。道路から見える階段を上ると灯台まで行かれ、そこから太平洋が一望できる。
奄美ポートタワーホテル
名瀬港に近い奄美ポートタワーホテルを拠点として2泊することにした。10階展望レストラン「ボートビュー」からは名瀬港がよく見える。
鶏飯は江戸時代、薩摩藩の支配下であった頃、代官をもてなすための料理であったが、今では奄美大島を代表する郷土料理になっている。茶碗に盛った米飯にほぐした鶏肉、錦糸卵、椎茸などの具材と葱、きざみ海苔、紅生姜などの薬味をのせ丸鶏のスープをかけて食べる料理で、出汁茶漬けに似た感じである。
2020年1月12日(日)曇り時々晴れ
油井岳展望台
大島海峡の景色は、奄美十景の一つである。油井岳(標高483.6m)の山頂付近では、入り組んだリアス式海岸と大島海峡や、その向こうに浮かぶ加計呂麻島が見渡せるはずである。しかし霧がかかって見えない。
高知山展望台
展望所までの散策路は2通りあり、行きは階段を上るルート、帰りにはもう一つのルートで駐車場へ戻った。
- ヒカンザクラ(緋寒桜)
- 高知山展望所入口まで5分
- サクラツツジ(桜躑躅)
- 展望台とヒカゲヘゴ
- 亜熱帯植物・ヒカゲヘゴ
- 大島海峡
- 古仁屋(こにや)の市街地と加計呂麻島
- 古仁屋の市街地と加計呂麻島
- 帰りの散策路
マネン崎展望所
瀬戸内町の古仁屋からホノホシ海岸方向へ向か途中に新しく整備されたばかりのマネン崎展望台がある。
蘇刈古仁屋線(626号線)をホノホシ海岸方面へ進む道路沿いに「ハートが見える風景」の案内板がある。嘉鉄湾の一部が隠れてハートに見えるようだ。
ホノホシ海岸
砂浜海岸とは違い、一面に丸い石が広がる河原のような珍しい海岸である。太平洋から打ち寄せる荒波に洗われて角がとれ丸くなり、河原の石のような玉石になったのである。
ヤドリ浜
ヤドリ浜は加計呂麻島と奄美大島に挟まれた海峡に面している穏やかな砂浜である。ホノホシ海岸から程近いが景色は全く異なる。
瀬戸内町
瀬戸内町は養殖クロマグロの生産量が日本一である。そのためクロマグロの巨大オブジェ(全長約6m)が設置されている。また島の固有種であるアマミノクロウサギとルリカケスをモチーフにしたオブジェがある。
マングローブ林
住用町は全体の94%が山林でありアマミノクロウサギ(特別天然記念物)やルリカケス(天然記念物)などの動植物が生息する自然豊かな町である。太平洋に面した住用湾の河口にはマングローブ原生林(国立公園特別保護区)が広がっている。
ハートロック
干潮時に潮だまりに溜まった海水がハートの形に見える自然現象であり、満潮時には海中に入ってしまうので見えなくなる。干潮時でも波が高いと波を被ってしまうので綺麗に見えないようである。
奄美大島紬村
大島紬は奄美大島の伝統工芸として作られる織物で、手で紡いだ絹糸を泥染めし手織りした絹織物である。細かな点と点を合わせて作る「絣」を組み合わせ、自然の草花をモチーフにした柄を織り上げる高級絹織物として、今日に至るまで愛され続けている。
絹糸を泥田で染める泥染めは、良質な鉄分を多く含み奄美大島の限られた地域でしか染める事のできない染色技法である。
本場奄美大島紬生産の全工程の見学ができる。大島紬を織る際の糸を作る作業は約10ヶ月かかるという。
夕食
居酒屋ではその土地の代表的な料理・郷土料理を味わうのもまた楽しみである。黒糖焼酎は奄美の地酒で、サトウキビの絞り汁から作る純黒砂糖と米麹を主原料に醸造した焼酎である。
2020年1月13日(月)曇り時々晴れ
金作原原生林
金作原を散策する場合、2019年2月以降は奄美群島認定エコツアーガイドの同伴が必要である。今回は金作原原生林散策3時間コース(アイランドサービス)に参加した。
- アイランドサービス駐車場
- 原生林の出入口 施錠されたゲート
- 下を向いて咲くリュウキュウイチゴ
- トトロが頭に乗せていたクワズイモは人が傘に出来るほどの大きさ
- ホソバリュウビンタイ(細葉竜髭帯)胞子嚢群が小羽片の辺縁(へんえん)の内側につくのが特徴
- 台風で倒れたヒカゲヘゴの幹は1~2か月位で中が分解されてパイプ状態になる
ヒカゲヘゴは常緑木生(もくせい)シダで、日本では最大のシダ植物である。ヘゴとはシダ植物の中で樹木のように幹を持つタイプの総称。茎は地上に直立し高さが7~8mにもなり、茎の先端に長さ3m程の葉を放射状につける。ヒカゲは日陰の意味で、大きな葉を日傘のように広げて、他の植物に陰を提供しているところから名前がつけられたと言われている。
- 歩き始めてから間もなくのところにあるヒカゲヘゴ
- 散策路
- 板状になっている幹
- メインポイントのヒカゲヘゴを真下から見上げる
- ヒカゲヘゴ
- ションベンノキ
- 散策路に咲くサクラツツジ(桜躑躅)
- 常緑樹林の林床や林縁などに生えるトクサラン(木賊蘭)の蕾とカゴメラン(籠目蘭)
- 斜面をシダが覆う
- 樹木に着生しているオオタニワタリ
- 赤から緑へのグラデーション
ヒカゲヘゴの幹には葉柄が枯れて落ちた痕跡が小判のような楕円形の模様に残っている。ある程度の年数が経つと先端が緑色の気根が出て、やがて黒い紐が絡んだようになりその表面を覆い見えなくなってしまうのである。
ハブやネズミの駆除を目的として、1979年にマングース(ジャワマングース)が奄美大島に放された。しかしアマミノクロウサギやアマミトゲネズミなどが襲われていたと考えられることから2000年からマングース対策が始まった。環境省のマングース駆除を行っているマングースバスターズによって2005年から島内に計画的にトラップを設置して駆除した結果、最近ではほとんどマングースを見ることはなくなったという。散策路からはマングース捕殺トラップが数年前に撤去されているが山中にはまだ設置しているとのこと。
帰路
金作原のツアーを終えて空港に向かう途中「郷土料理 鶏飯 ひさ倉」に立ち寄った。自家養鶏場と畑を持ち具材は自家生産しているこだわりのお店である。鶏飯は店によって味が違うので何軒かのお店で食べ比べるのも良いと言われている。