秋田駒ヶ岳の高山植物と奥松島の海を楽しむ
秋田駒ケ岳はアプローチが比較的容易で、季節に応じ多様な高山植物がハイカーを迎えてくれる。秋田駒ケ岳にはこれまで数回訪れているが、今回は大焼砂でお目当てのコマクサの大群落を見ることが出来た。奥松島の馴染みの宿では新鮮な海の幸を味わい、山と海を楽しむ夏の旅となった。
2016年7月16日(土)晴れ
秋田駒ヶ岳トレッキング
秋田駒ヶ岳(1637m)は高山植物の豊富な山として知られ花の百名山にも選ばれている。早朝アルパこまくさ駐車場からバスに乗り換え秋田駒ヶ岳八合目に着く。八合目登山口から新道コースを辿り阿弥陀池に向かう。阿弥陀池までの登山道は全体的に緩やかな登り坂である。
八合目と阿弥陀池のほぼ中間点の片倉岳展望台に着いた。晴れていれば森吉山や鳥海山などの山々を望めるはずだが、あいにくガスが立ち込めて展望は良くない。
高山植物の花々を眺めながらを登山路を進むうちに雲が切れ、青空の向こうに男岳が見えてきた。
阿弥陀池
登山路は木道に変わり更に進むと阿弥陀池に出る。阿弥陀池は男女岳(おなめだけ1637m)、男岳(おだけ1623m)、横岳(よこだけ1882m)などの山々に囲まれた池で、周囲に木道が整備され畔には避難小屋が建てられている。
阿弥陀池の周辺にはお花畑が広がっており、チングルマやエゾツツジの群落が見られる。
ムーミン谷
阿弥陀池を後にして男岳への登山路を登り、男岳分岐から急斜面を下り秋田駒カルデラの凹地に入る。男岳から南東に延びる登山路「馬場の小路」は高山植物の種類も多く、別名「ムーミン谷」と呼ばれる人気スポットである。
男岳分岐からムーミン谷に向かう急斜面を下りきると谷筋に続く緩やかな路になる。振り返ると男岳の荒々しい山容が見える。
ムーミン谷一帯にはチングルマの大群落があり、谷の雪が消える頃になると一斉に白い花を咲かせ素晴らしい景色となる。残念ながらこのあたりのチングルマは既に咲き終わり羽毛状の果実となっていた。もっとも、輪状の果実を子供の玩具の風車「稚児車」に見立て、稚児車が転じてチングルマの和名になったそうであるから、果実の状態のほうが自然なのかも知れない。この辺りから再びガスで視界が悪くなった。
大焼砂
ムーミン谷を抜け更に進むと国見温泉方面から横岳に向かう登山路に出る。このあたりは大焼砂と呼ばれ一面黒い火山礫に覆われているため、やや歩きづらい場所である。一帯はコマクサの大群落になっている。コマクサは「高山植物の女王」と称される美しい花で、高山帯でも特に環境が厳しく他の高山植物が生えることができないような稜線の砂礫地を好んで生育する。丁度開花期を迎えた夥しい数のコマクサが斜面全体を覆っている様は壮観である。
大焼砂は尾根筋に位置しているため眺望がよく、秋田駒ケ岳の山々や田沢湖を望むことが出来る。はるか下方には先程歩いたムーミン谷の木道が紐状に続いている。
大焼砂でコマクサの大群落と尾根からの眺めを満喫した後、横岳・焼森を経由し焼森分岐から下山路を辿り八合目に向かった。
田沢湖
八合目からバスでアルパこまくさ駐車場に戻り、今夜の宿の田沢湖ロッジに向かう。田沢湖は水深423mと日本一深い湖で、湖畔には有名な「たつこ像」がある。たつこ像は、永遠の若さと美貌を願い湖神となったと伝えられる伝説の美少女たつこ姫をイメージしたブロンズ像で、黄金色に輝く姿を湖に映している。
2016年7月17日(日)雨のち曇り
道の駅めぐり
秋田県阿仁の「安の滝」に行く予定だったが朝から生憎の雨。未舗装の林道を走行するのは危険なので滝行きは取り止めにし、早めに今日の宿泊地の奥松島方面に向かうことにした。途中、大仙市の道の駅「なかせん」、仙北郡美郷町の道の駅「雁の里せんなん」、横手市の道の駅「さんない」に立ち寄った。大仙市中仙地区は秋田県の民謡ドンパン節発祥の地で、「ドンパン節の里」と呼ばれている。
筏の大杉
横手市山内筏地区の比叡山神社境内には、巨木樹高43m、根幹の周囲が12m、樹齢千年といわれる杉の巨木が生育している。この杉は「筏の大杉」と呼ばれ、秋田県の天然記念物に指定されている。
途中、宮城県登米市の物産館「愛菜館」に立ち寄り、宮戸島の民宿「新浜荘」に到着した。宿の夕食は海の幸が満載で魚好きには堪えられない。勿論季節を迎えたウニも欠かせない。
2016年7月18日(月)晴れ
朝の月浜
早く目覚めたので食事前に周辺を散歩することにした。宿の裏手を少し歩くと月浜岬展望台に出て奥松島の海が見渡せる。
宿の直ぐ前の浜は「月浜」と呼ばれる海水浴場である。浜には小さな船着き場があり民宿の漁師などが利用するようだ。
月浜では東日本大震災の復旧工事の一環で防潮堤の工事が行われていた。
嵯峨渓散策
嵯峨渓は、岩手県の猊鼻渓、大分県の耶馬渓と並ぶ日本三大渓の一つで、奥松島・宮戸島の東南端に突き出た半島周辺のエリアである。松島湾の優美な景観と対照的に、荒波と風雨によって削られた海岸線は日本有数の渓観と賞されている。嵯峨渓観光は遊覧船に乗り海上から嵯峨渓を眺めるコースがお勧めのようである。嵯峨渓には断崖絶壁の上を歩く遊歩道があり、崖の上側から海を望むことが出来ると聞き、今回は遊歩道を散策することにした。
嵯峨渓遊歩道
大浜の遊歩道入口から遊歩道を歩く。森の中の細い階段を上ると、やがて海の見える場所に出る。
途中にある唐船番所は仙台藩が外国船見張のために設けた監視所で、現在は跡地に石碑が建てられている。
嵯峨見台
室浜まで戻り嵯峨見台へ向かった。嵯峨見台展望所には東屋が建てられており、奥松島の海や不思議な形をした島が見渡せる。
嵯峨渓散策を終えると宮城県大郷町に向かい、道の駅おおさとの農産物直売所で買い物をし、鳴子温泉の立寄り湯で汗を流した。帰路、亘理町の「味ざんまい」で食事をし帰宅した。